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喫茶くろねこ

第1章 アルバイト募集

しかも、僕は今、なるべく家賃の安い部屋を探している最中だった。それと、時間に融通の利きそうなバイト先も探しておかなくてはならない。

時間に融通が利くかどうかは、話を聞いてみないとわからないが、ここなら家賃無料の部屋と、アルバイト先が同時にゲット出来る。

怪しい。怪しいけど、美味しい…かもしれない。

しかも、3食賄いつきなら食べるのにも困らない…。

いや、まてまて。旅館とかホテルならともかく、なんで喫茶店なのに“住み込み”でバイトを募集してるんだ?
24時間営業でもしてるのか?そして24時間休み無しに働かせるブラック喫…わからない、さっぱりわからない……。

店の前で棒立ちのまま、いったい何分が過ぎただろうか。時折、道行く人が不審そうな目で僕を見ながら通りすぎていく。

違う!!

違うんだって!不審なのは僕じゃなくて、貼り紙!この貼り紙が、不審なの!

心の中で反論してみる。
しかし、1年で一番寒い時期であるこの2月に、コートも着ずに屋外で微動だにせず立ち尽くしている…というのは、確かに不審に見えるかもしれない。
いや、不審に見えるのは、スーツなのに足元だけがスニーカーというちぐはぐな恰好のほうだろうか。

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