喫茶くろねこ
第5章 下地家
「ネコさんネコさん、待っていて~。今すぐ~。今すぐ会いに行~く~わ~~~♪」
オリジナル歌詞をオリジナルメロディーで、即席で作って歌いながら食器を片付ける母。いつもながら楽しそうだ。
「あ、あんた、さっきのしわしわヨレヨレスーツ、クリーニングに出しときなさいよ」
することもないので自分の部屋に戻ろうとすると、歌っていたはずの母親から言われた。背中に目でもついてんのかな。
「クリーニング代は?」
「そんなもの、自分の小遣いから出しなさいよ!帰ってきたらすぐに脱いでハンガーにかけとけば大丈夫なのに、あんたが着たまんま寝たからヨレヨレになったんでしょ!」
…ごもっとも。正論過ぎて何も反論できなかったので、とりあえずスーツを取りに部屋へ戻った。そして脱ぎ捨てたスーツを拾い上げる。
えーと…袋…、袋…。
まさかスーツをむき出しのままクリーニングに持っていくのもどうかと思ったので適当な袋がないか探したが、いいものが見つからず、またダイニングに顔を出す。
「母さん、なんか袋ない?スーツ入れて持っていけるようなやつ」
「そこ。出しといたわよ」
見ると、椅子の上に大きめの紙袋が用意されていた。その袋にスーツを突っ込み、サンダルを履いて勝手口から外へ出る。
寒い!!