テキストサイズ

喫茶くろねこ

第5章 下地家


―――――……。

「はぁ~、食った食った。ごちそうさまー。うぅっ…ちょっと食べすぎた…」

お代わりまでして炊飯器の中身がすっかり空になるまでタコ飯を食べ続けた僕は、お腹がいっぱいになりすぎて少し苦しかった。

「はい、お茶」

腹をさする僕に、母親が急須で淹れた熱いお茶を差し出してくれた。食卓の向かい合う席に母親も座る。

「…で?」
「…え?」
「え、じゃないわよ。食べ終わってから話すって言ったの、あんたよ」
「あぁ、うん。細かく話すとちょっと長いんだけどさ、結論から言うと、春から住める部屋と、バイト先が同時に見つかった。で、その春からのバイト先に革靴、置き忘れて帰ってきた」
「なるほど」

それから僕は、足が痛くなってスニーカーを急遽買ったことや、『喫茶くろねこ』の表で見つけた住み込みバイトのことや、マスター代理の山路さんからさっき電話がかかってきて契約の話をしたことなどを話した。
ただし、テレパシーが使える不思議な猫の話は、話しても信じないと思ったので、喫茶店の看板猫的な存在の黒猫がいて、その猫との触れ合いが『売り』の猫カフェ的な喫茶店だ、とぼんやりと濁して伝えた。

「へぇ~。看板猫ちゃんのいる喫茶店!ねぇねぇ、その猫、可愛かった?それとも凛とした綺麗系の猫?
息子がこれからお世話になるんだしー、オーナーさんに一度ご挨拶に行っといたほうがいいかしらね~」

しまった。無類の猫好きの母がガッツリ喰いついてしまった。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ