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喫茶くろねこ

第6章 春 ~母と猫と入学式~

それから、入学式までの間、僕の仕事のメインは猫部屋での保護猫たちの世話だった。猫トイレの掃除をしたり、猫たちのブラッシングをしたり、子猫の遊び相手をしたり。

たまにマスターが猫部屋の様子を見にやってきては、猫たちの気持ちを僕に通訳してくれる。たまに良かれと思ってやったことで猫達に嫌がられたりする時の猫の気持ちを、マスターが詳しく解説してくれた。

体中、猫の毛まみれになるので、営業時間中はあまり喫茶店に出ることはなかった。閉店後に、一度部屋に戻ってシャワーを浴びてから、サイフォンでのコーヒーの淹れ方や、簡単な調理の練習をする。指導係は主に佐々木さんだ。佐々木さんの淹れるコーヒーは絶品だ。一見さんが彼をマスターだと誤解するのもわからなくもない。

ニコルスは、コーヒーを淹れる腕は可もなく不可もなくな感じだが、とにかく焼き菓子を作るのがうまい。スイーツ男子だ。

基本的に、佐々木さんとニコルスは喫茶店での接客担当で猫部屋にいくことはあまりなく、中井さんは猫部屋での猫の世話がメイン、喫茶店では、マスターの占いの補助(通訳)と、里親マッチング希望の客が店に来た時の対応を担当しているということだった。

「僕は…?」
「両方やってみて好きなほうに入ればいいさ。ただ、サイフォンでまともな珈琲が淹れられるようになるまではキッチン業務は無理だからな。店の掃除とかウェイター業務とかなら、大丈夫だが」
「…もしかして、中井さんがキッチン業務ノータッチなのって…」
「ちっ、違うわよ!私はね、猫が好きでこの喫茶店に入ったの!サイフォンぐらい使えるわよ!?」

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