無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

「あぁ～、いいかもしれんな。失恋を癒すには新しい恋だ」
「だから、失恋はしてませんってば！！」
「そうよねぇ。失恋どころか、そもそも恋すらしてないものね」
「うぐっ」

佐々木さん以上に辛辣、かつ、的確なツッコミに返す言葉を失う。

「下地君はね、ちょっと行動範囲と視野を広げてみたらいいと思うの」
「はぁ…」
「どうせ、ここと大学の往復しかしてないんでしょ？」
「そ、そんなことはっ」
『あるだろう』
「うぐっ」

マスターは一言だけ口（テレパシー）をはさむと、あとは澄ました表情で顔を洗っていた。

「マスター、耳の後ろ掻きましょうか？」
『頼む』

中井さんがマスターに確認を取ってから手を伸ばす。
目を細め、気持ちよさそうにしながら、中井さんに身を預けるマスター。

「じゃ、ボク上へあがりマス」

ニコルスがそう言って席を立つ。

「じゃ、俺もそろそろ帰るかな。ま、なんかあったら相談しろ。あと、女は彼女ただ一人ってわけじゃないぞ。世の中、女なんてまだまだいっぱいいるからな。たった一人にフラれたぐらいのこと、気にするな」

「女もいっぱいいるけど、男もいっぱいいるんだから人口の男女比率で考えたらそんなに余裕ってものでもないでしょ」