*カレイドスコープ*
第1章 *拒む君の手を握る*
「じゃあ」
「もう、夜も更けてるし、送るよ」
「子どもじゃあるまいし、一人で大丈夫」
いつもなら、アパートの玄関で別れを告げる僕だが、外はもう深夜だった。
“またね”の無い君のその別れの挨拶は、僕たちの間に別れが忍びよっているからで。
それを認めたく無い僕は、駅へと向かう為に歩きだした君の隣に駆け寄ると拒む君の手を握った。
「離して――」
「嫌だ」
僕達はまだ別れた訳じゃない。
少なくとも僕は納得はしていない。
確かに、僕は君以外の女性と関係をもったけど、それの何が悪いの?僕の一番は君なのに。君だけしかいないんだ。