*カレイドスコープ*
第1章 *拒む君の手を握る*
* * *
君が去った後で、去っていく君のその後ろ姿を思い出した。遠ざかっていく背中とその心の距離を――――。
そして、僕は一人。
誰も僕の回りにはいない。
僕は“君のことを愛してる”そう口にしてみる。誰もいない夜に何度も、何度も言ってみる。
僕の想いとは裏腹に、離れて行く君がいた。
何かを断ち切るように振り返ることもしないその後ろ姿に、そうわかっている僕なのに、その姿さえ愛しく思うのだ。
瓶に詰め込んでしまいたくなる程に。
君の歩く小さな歩幅を思い出し、ぎこちない歩き方をしてみる僕は、なんだか酷く滑稽だった。
街灯に導かれ、ずっと歩き続けた僕の目に白んで行く空が見えた。
後、少しで夜が明ける―――――そう思う僕だった。
2017.02.05(sun)*fin*