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*カレイドスコープ*

第1章 *拒む君の手を握る*


 でも、僕は現実に戻る。

 明日は月曜日。僕も彼女も普通の日常が待っている。彼女をこのままさらってしまえる程、僕は若くもなければ、その勇気も無かった。
 僕が、握った手をそっと離すと、彼女はホームで待つ電車に乗り込んでしまう。
 
 
―――去るものを追いかける僕。来るものを拒んでる僕。
 
 
 走り出した電車に向かい、“君のことを愛してる”ぽつんとそう呟く僕がいた。
 その声は走り去る電車の音に掻き消され、君に届くことは決して無いのに。
 
 

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