*カレイドスコープ*
第1章 *拒む君の手を握る*
「離して!」
何度も何度も“離して”という君の言葉。
更に怒りだした君を無視しながら、その声さえも瓶に詰め込んでしまいたい―――なんて、そんな風に思う僕がいて。
それでも。
君の手を強く握りながらも、僕は駅に向かう君の歩幅に会わせて歩き続けることをやめはしなかった。
あの角を曲がれば、駅へと続く通りに出る。
駅の明かりが近くなれば、自然に足取りが早くなる君がいて。
終電を乗り過ごせば――君は帰れなくなるのを僕は知っているのに、僕達は歩き続けた。
君の住む街へと繋がるその電車。良く知っている筈のその街を、僕はまるで知らない街のようだと思う。
僕から君を切り離す―――そんな電車が嫌で、行き先は聞かないけれど、僕も一緒に乗り込んでこのままずっと……なんて。
そんなことを一瞬考えたりしたんだ。