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委員長はエッチでした

第10章 上書き





家に入って
亮に電話しようか
悩むけど



大事な話だし
電話で言うのも
違うと思って


結局電話出来ない
別れぎわの
亮の態度も気になるし

また
喧嘩みたいに
なっても
嫌だし。



やっぱり学校で
明日の朝でも
いいけど



散々悩んで
落ち着かない
気持ちを抱えて
眠りについた。






夢を見た。



結城さんの夢。
夢の中でも
会いたくなんか
ないのに



布団にくるまって
寝ているあたし
ここは
おばあちゃんの
家なのに
どうしてだか
あたしが寝ている
枕元で
結城さんが

座っている。



あたしをじっと見つめて
頬を撫でられる
優しく
愛しそうに

その感触が
なんだか
やけに
リアルで。



夢なのに
不思議と
心地良くて
あたしは
金縛りになったように
動けない。



『彩香……、
愛しているのに……
どうして、一緒になれない?
俺はただ、お前の傍にいたいだけなのに……』




悲しそうな表情
夢を見ている
あたしは
心の中で呟いた。



結城さんのせい……
あなたが全て

あなたのせいで
あたしの生活は
壊された
一緒になんて
いられる訳なんかない。



『どうして、一緒に居てくれない』



結城さんと
本当の家族のように
過ごした。



近所の優しい
お兄ちゃん
困った時
寂しい時
いつも傍に居てくれて……。




裏切られた
そう思ったのは
あたしの方。



……失恋したあたしの心を
最悪なやり方で
踏みにじったのは
結城さんだ。



金縛りになったようで
動けないあたしは
眠ったまま
涙を流す。



そんなあたしに
そっとキスをする結城さん。




暖かい唇の感触。
おかしな夢。




あの人はもう
優しくなんて
ないのに。




おかしな夢



有り得ない現実。




朝目が覚めたら
あたしの部屋に
微かに残る
お酒と香水の
香りがした。




そっと唇を撫でる。




……嫌な夢を見てしまった。




あたしの頬に
残る涙を
手のひらで
グイっと拭う。



部屋の窓をじっくり見て
首を振った。



嫌な夢だった……。

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