委員長はエッチでした
第3章 家族とは
ってちょっと待てよ。
出張って
出張に行くって
今言った?
「お母さん、出張とか、そういう事はもっと
早くに言ってちょうだいよ!
結城さんも一緒に行くの?」
テーブルにお母さんの朝食を
並べながら
軽く睨む。
「あら、結城には、変わりにあたしの仕事を
やって貰わなくちゃいけないからね?
有能な社員が二人も、下らない会議に行ける訳ないでしょ?」
知るかよそんな事。
あたしにとって
重要なのは
結城さんと
この家で
二人っきりに
なってしまうって事だから。
「下らない会議って、あの件の事かな?
それで緊急会議?」
結城さんの座るテーブルの前にも
朝食を並べて
お母さんが席に座る。
「そうよ〜
全く、海外赴任の話もあるのに、馬鹿な社員が
迷惑なこと、やらかしてくれたもんだわ」
仕事の話をしながら
両手をついて
「いただきます」
呟く二人。
ご飯をよそおう
あたしの手が
ぴたりと止まった。
「ちょっと待ってよ、今、何て言ったの?」
聞き間違いだろうか?
味噌汁を飲みながら
お母さんがキョトンとする。
隣で結城さんが
はっとしたように
お母さんの背中を
軽く叩く。
「何よ〜?
馬鹿な社員の話?」
「違うっ、
海外赴任って……誰の話?」
今
さりげなく
サラリと凄い事
言わなかった?
一瞬
静まりかえる食卓。
暫くして
お母さんの渇いた笑い声が
白々しく響いた。
「やだな〜彩香、
海外赴任だなんて、お母さんがそんな、
年頃の娘を一人置いて、行ける訳ないじゃない!」
「……でも、凄いチャンスだよね?
早苗さんだって、それを目標にして、
今まで頑張って……」
「……結城はちょっと、黙ろうか?」
お母さんがピシャリと
鋭く結城さんの
言葉を遮る。
「お母さん、本当なの?」
お母さんのひきつった顔を
睨むと
サラダのきゅうりを
ポリポリ食べながら
溜め息をつく。