委員長はエッチでした
第3章 家族とは
体中が
ガタガタと
発作のように震えて
止まらない。
滝のように流れる涙。
恐ろしい記憶。
暴れるあたしを
大人の力で
押さえ付けた
結城さん。
『……どこにも逃げられないよ、
俺は君の家族なんだから……』
逃げ惑うあたしを
楽しんで
追いかけて
追い詰められて……。
力では叶わなかった。
昔は近所のガキ大将で
喧嘩もしたし
負けた事もなかったのに。
少しも叶わなくて
殴られた
痛みが
ショックで。
誰にも
殴られた事がないと
はじめて思い知らされた。
暴れて
必死で抵抗して
突き飛ばされて
壁に頭を打って
少しだけ
気を失った。
意識が戻った時は
既に遅かった。
目の前に
凶器のような
肉棒があって
それに貫かれた
何度も
何度も
恐い……。
男の人は恐い
力では叶わない。
我慢していたら
大人しく
していたら
痛い事はされない。
「お願い……恐いの……っ」
しゃがみ込み震えるあたしを
優しく
抱きしめてくれた。
同じように
しゃがみ込んで
真っ直ぐな黒い瞳には
もう
獣のような
光が宿ってない。
その事に
安心する。
「……彩香さんのこと、やっと分かった気がするよ……
ごめん……っ
傷つけるようなつもりは……なかったんだ……
だから……どうか……彩香さんを傷つける……
人のことを……教えて欲しい……」
黒崎のたどたどしいけど
真っ直ぐな言葉。
優しい体温。
あたしの震えが治まるまで
ずっと一緒に
抱きしめてくれた。
結城さんの事を
誰かに話す?
そんな事を言えば
黒崎に嫌われるかも知れない。
幸せそうな
お母さん。
やっと掴んだ幸せが
壊れる事に
なるかも知れない。
あたしだけが
我慢すれば
それでいいのに。
本当にそれで
いいの……?