
アイシカタ
第1章 Kiss
「あっ翔ちゃんおかえりー!」
教室に入ると俺に気づいた雅紀が声をかけてきた。
手には美味しそうな焼きそばパンを持っている。
「長かったですね、彼女粘ったんですか?」
その雅紀の横にいるニノが、ゲームをしながら聞いてきた。
「そうなんだよ。『私のどこがダメだったの?』ってずっと言ってくんの。んなもんねーっつってんのに」
「前の彼女もそんなんだったじゃないですか」
「流行ってんのかねぇ、聞くの」
「で、どうやって別れたんですか?」
「なんでなんでってうるせーから腰抜かすまでキスしてそのまま置いてきた」
「キター!!キス魔の翔ちゃん!!」
答えるや否や二人して叫びだした。
別にキス魔じゃねーっつの。
「相変わらずキス好きだね、翔ちゃん!しかも最後の最後に腰抜かせるって…!!」
「別に大したことじゃねーだろ」
「いやいやいや、そう最後にキスして終わるなんてないですよ?」
ねっ?なんてキャッキャと女子みたいに盛り上がるニノと雅紀。
何がそんなに面白いのやら…
そんな二人を横目にパンの袋を開けて遅い昼食をとり始める。
愛梨と別れるために15分も時間を使ったから、だいぶ腹が減っていた。
五分で終わらせるつもりだったのにな。
もっとサッパリした奴だと思っていたのは俺の勘違いだったようだ。
それにしてもさすがカレーパン、最高に美味しい。
