
アイシカタ
第1章 Kiss
結局雅紀が宿題を写し終えたのは、チャイムが鳴るのとほぼ同時だった。
いや、そういうと語弊がある。
書き写す、という作業だけならば実は5分もしないで終わっていた。
しかし先生に当てられた時対策で意味やら読み方やら大量に質問してきた。
それを全部教えていた結果、こんな時間になったというわけだ。
別に責めるというわけではないが、こんなに毎回慌てるくらいなら家でのんびりとやってくればいいのに…
先にやるのが一番楽なことに気づけないのか?
まあそれでこそ雅紀な気はするが。
なんてブツクサ考えていると、大野が入ってきた。
英語の教師だ。
相変わらず今日も気だるげな顔をしている。
前の方の女子が「おはようございますっ」って声をかけたら、ニコッと笑って「おはよう」と返した。
その笑顔に女子共が顔を赤くした。
それもそうか。
綺麗な顔立ちをしているんだ、この大野という男は。
少し垂れている優しげな目元に形の整った鼻、柔らかそうな唇。
にこりと笑えば大体の女子は心を奪われる。
男の俺だって見とれてしまうのだ。
それに大野自身が醸し出す、柔らかくてふわふわしたオーラ。
大人らしからぬこの独特な雰囲気が妙に人を惹きつける。
結果大野の周りには人が集まる。
大野に興味を持つ。
それは俺も例外ではない。
