いとしいとしというこころ
第4章 和くんの過去
「2個目は、割と最近。
和が塾に行ってて。
遅くなる時は俺や母ちゃんが迎えに行ってたんだけど。
父ちゃんは忙しい人だし帰ってくるのも遅いからさぁ。
たまたま二人とも行けなかった時に。
そいつは和のことをいつも見てたみたいに一人になったのをチャンスと思ったのか、路地裏に連れ込んで…
触ったんだよ、和の体を。」
許せない。
グッと拳を握りしめて怒りを封じ込める。
「…大丈夫だったの?」
翔ちゃんは今までの硬い表情を崩してクスリと笑った。
「うん。
和がさ。撃退したんだよ。
あの和がだよ?」
俺は笑っていいものかと、堪えて続きを訊いてみる。
「どうやって?」
「最初はびっくりして声も出なくて洋服の上からとはいえ体をまさぐられたから、なんとか身をよじって一瞬、相手がひるんだ隙に蹴ったり肘鉄食らわしたりしたって。」
和くん…がんばったんだな、って。
聞きながら泣きそうになってしまった。