いとしいとしというこころ
第8章 友達の弟
それから俺はなにも考えたくなくて現実逃避するように寝込んだ。
ずっと部屋で過ごした。
週末も家から一歩も出ずに和くんからのメールにも反応しないで。
悩み事を抱えると知恵熱を出す俺は久しぶりにボーッとする頭や体をだらしなく転がせていた。
抜け殻みたいだ。
もうなにもしたくないし、考えたくない。
でも目を閉じると和くんの顔が浮かぶ。
いつもは思い出したくてもうまく出てこないのに、こんな時ばかり鮮明に描き出されるなんて。
「ちょっとあんた、大丈夫なの?」
いつも放任なお母さんが、さすがに心配してやって来た。
「久しぶりにこんなあんたを見たわ。少しは食べなさい。
なにかあったらすぐ電話してね。」
そう言って、お粥とリンゴのすりおろしが乗ったお盆を置いて仕事に出掛けた。