いとしいとしというこころ
第2章 恋とは知らずに
あ、帰っちゃう…
慌てて言葉を投げかける。
「ありがとう!
あのさ?俺、本屋で…
キミのこと見たことある、」
「あー!」
ちっさい犬もキャン!って俺の足に纏わりついて。
目の前のこの子もくるくるお目々で俺を見てるし。
なんか色々と可愛い。
間近でじっくり確認してやっぱりとんでもなく可愛いと確信。
「帰ってきたのかー?
早くね?」
玄関が開けられて中から翔ちゃんが顔を出す。
「しょーちゃん!」
「にいちゃん!」
……
??
にいちゃん?
「あれ?雅紀?
家、わかった?
和は散歩終わったの?」
俺とこのカズと呼ばれたこの子とを見て、不思議そうな顔をしてるけど、中へと促す。
「ま、入れ入れ。」
わんこを抱き上げて玄関に置いてあったタオルで足を拭くのを自然と手伝う俺。
「ありがとうございます。」
ニコッと笑って何故か俺にわんこを渡して靴を脱いで“カズくん”はスタスタと上がった。