いとしいとしというこころ
第2章 恋とは知らずに
わんこは俺の腕の中で丸まって収まったまま。
おとなしいなー。
うるうるの目で俺を見上げる。
“カズくん”とダブる。
「雅紀ー、なにしてんのー!
こっちこっち。」
玄関で一応上がったけど突っ立ったままの俺に奥から顔を出して翔ちゃんがせっつく。
わんこと二人の世界に入ってた。
“カズくん”も手洗いが終わったらしく洗面所から姿を現して、
「にいちゃんの友達だったんだー。」
って俺にも翔ちゃんにも聞こえるように話す。
こっちだよ
“カズくん”の後ろに続いて廊下を歩いてリビングに辿り着いた。
翔ちゃんはお母さんがちょっと用事で出掛けたって一人でバタバタしてる。
「なに手伝うー?」
「なんか手伝おうか?」
“カズくん”とハモった声に翔ちゃんが笑って、
「じゃあこれ並べて。」
と、材料の乗った皿やグラスを差し出した。