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ありがとう

第1章 ありがとう

 そんな日々が続き、春休み明け、今日から高二という時。

「おーい柊(ヒイラギ)!」

 名前を呼ばれ振り返る。そこには、こんがりした小麦色の肌、短く切り揃えられた髪をした男の子がいた。

「ん? 誰でしたっけ?」

「小さい頃、近所に住んでた木更津優真(キサラヅ ユウマ)」

「んーごめん、あまり覚えてないです」

「うわっ! ひでぇ」

「ところでこの学校にいましたっけ?」

 私は気になったことを聞いた。

「いんや、編入してきたんや」

 優真はニカッと笑い答えた。

「なんでまた?」

「どうも俺には男子校ってのが合わんかったんやわ」

 優真は頭をポリポリ掻いている。まったくこの男は。

「あ、そうなんですか」

「なんや、それだけかいな。冷たいやっちゃなあ。せや、柊の友達でも紹介してや」

「友達は……」

 私は俯き口ごもる。「なんや、おらんのか?」

「まあ、そういうことになります」

 そこは、きっぱり言い切った。

「まあ、今日からは俺が友達やでっ!」

 優真がそう言ったと同時にチャイムが鳴り、走って教室に向かった。

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