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1P短編集

第20章 狐の恩返し

 満月の夜。貴女に逢いに来ました。

 川の水面、私には亡くなった大切な人を独り、この珠に載せて、少しの間だけ逢わせることができます。

「どうして私の元へ?」

 貴女が遠い昔、私を弔ってくれたからです。そのお礼をしたく、天にいる狐王様に私の魂と引き換えに貴女のお役に立てればと……。

「そんなことしたら貴方は……」

 私はいいのです。この命、元々は――なかったも同然なのですから。

 私は、涙に濡れた少女に力なく笑うことしかできなかった。

 本当は、あの日から貴女が好きでした。けれど、叶わぬ想い、1度だけでも貴女のお役に立てる。それだけで幸せだと思えるから、だから、そんな悲しい顔をしないで。


fin.
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