その瞳は誰を見てるの?
第4章 その瞳は誰を見てるの? 4
マンションのエントランスに入る。
キーをタッチ。
ゆっくり開くオートドア。
エレベーターに乗り込んでから、自宅の階までがやたらと長く感じる。
智くんとは微妙な距離感を保ったまま。
ようやくドアの前に。
解錠するやいなや、智くんに後ろから押され、つんのめりそうに。
「何すんの?危ないじゃ…んんっっ……」
振り返ったままの状態で抱きしめられ、キスしてきた。
昨日のような優しいものではない。
激しい…熱い…力強いものだった。
動けない。
力の加減ではなく、精神的ダメージがでかくて動けないんだ。
ジリジリ迫ってくる智くんに、俺も少しずつ後退りしていく。
んっ!倒れる!
案の定、しりもちをついて倒れる俺。
唇が離れた智くんは、せつなげな笑みを浮かべて更に近付く。
靴を履いたまま玄関廊下に仰向けになった俺に股がり、また顔が近付いてくる。
やっぱり動けない。
動こうともしていないのか?
迫る智くんのこと、決して嫌ではないんだ。