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その瞳は誰を見てるの?

第5章 その瞳は誰を見てるの? 5




マグカップを持つふたりの手を、じっと見つめる智くん。


「あったかい……」

「こんなに冷たくなって…風邪引くだろ?」

「ごめん……」

「謝るなよ……」

「嬉しかった…しょおくんの姿が見えた時……」


マグカップを包み込んだまま見つめるふたり



そのままそっと口づける。


「唇も冷たいよ…」

「ふふっ…しょおくんのはあったかい……」


微笑みあう。

静かな時間が流れる。


智くんが口を開いた。


「松潤、来ないの?」

「・・・・・・・」

「来るんだね……?
 ……帰るよ、しょおくん……」

「智っ……」

腕を掴む。


「コーヒーごちそうさま。
 会えてよかった…ありがと……」

そう言って、俺の頬にキスをして急いで出ていった。


玄関に立ち尽くす。




エントランスのチャイムで我にかえる。


潤…?なぜ、キーを使わないんだ?


解錠する。

ドアを開けて潤を待つ。



「あ…翔さん、ただいま…お待たせ…」

「お帰り。寒かったろ?」

「うん、少しね。でも、若いから大丈夫!」

「なんだよそれ。
 あ、渡してあるキー、使わなかったの?」

「あぁ…今日は忘れてきちゃって…翔さん、先に帰っててくれてよかった!」

「そっか…」


自宅のキーと一緒に、キーホルダーにつけていたよな?


忘れたって……?


それはないよな……?



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