その瞳は誰を見てるの?
第6章 その瞳は誰を見てるの? 6
~S side~
新しいコーヒーを淹れ直し、潤と二人で楽しむ。
ひとくち飲んだ時、潤が話し出した。
「翔さん…誰か来た…?
翔さんのコーヒー、誰か飲んでったの…?」
一瞬、コーヒーで咳き込みそうに。
「急にどうした…?誰も来ていないよ。
さっき俺が飲んだ。」
「そうなの?」
「そうだよ。」
「……カップ……違ってた……」
「えっ…潤、そんなこと?」
「翔さんにとってはそんなコトなんだ。別にいいけど……」
拗ねてしまったか?
さっきのマグカップ……そうか。
そんなこと全く気にしていなかったけど、潤にとっては、いや、俺にとっても大切なコトだったんだよな。
「怒ってる?」
「別に怒ってないけど……」
「けど?」
「…不安なんだ……この間、大野さんのマンションから出てきた翔さんを見た時から、不安で不安で…仕方がないんだ……」
「潤?こっちを見て…大丈夫。心配なんかいらない。俺はお前のモノだから……」
「本当?僕だけの翔さん…?」
「ああ…そうだよ……」
「っ…翔さんっ!!」
飛び付いてきた。
しっかり受け止める。
潤は胸に埋めていた顔をあげ、そっと俺にキスをした。
それに応える。
胸に、チクリとしたものを感じながら。