その瞳は誰を見てるの?
第6章 その瞳は誰を見てるの? 6
~S side~
大分眠ったみたいだな。
スッキリと目が覚めた。
ん?コーヒーの香り……
潤が先に起きているみたいだな。
リビングには昨夜あんなに乱れたコトを微塵も感じさせない潤が、真剣な表情でコーヒーを淹れていた。
「おはよう、潤。いい香りだね。美味そうだ。」
「翔さん、おはよ。
今朝は上手く淹れられたみたいなんだ。」
ペアのカップにコーヒーを注ぐ。
俺の前にコトリとカップが置かれた。
「どう?翔さん…?」
「ん、合格っ!」
「ホントに?やった!」
「マジで美味いよ。ありがとう。」
「どういたしまして。
翔さん、今日はよく眠ってたね?あまりにも気持ち良さそうで起こせなかった。ホントはキスしたかったけど……」
「ふふっ…して欲しかったな……
久々によく眠れたな…お前のおかげ。」
「よかった…でも、やっぱり眠れていなかったんだね……」
「あ…いや、持ち帰りの仕事が多くてさ…ここんとこちょっとキツかったんだ……」
また嘘を。
「そうなんだ…でも、あんまり無理しないでね?翔さんはもう30なんだから。」
「うるさいよ。まだ30だっ!」
「はいはい。じゃ、ちょっと早いけど先に行くね。家に取りに戻らなきゃならない物もあるし。」
「そうだったな。じゃ、また後で。」
「うん、後で…」
ソファーの後ろから回り込んで俺にキスをして、
潤は帰っていった。