その瞳は誰を見てるの?
第10章 その瞳は誰を見てるの? 10
コンコンコン…ガチャ…
楽屋のドアが開く。
「おはよ……」
「智くん…っ…おはよ……は…早いんだね?」
想定外の事態に少したじろいでしまった。
「あ、大野さんおはよう!今ね、全部終わったとこ。早く来られたんだね?丁度よかったじゃない?翔さんに会えて。」
「え?あ…うん……」
「そうだ!ねぇ、翔さん?今晩なにが食べたい?買い物して帰るからさ。」
「あぁ…そうだな……なにがいいかな……」
「じゃあ、決まったらメールして。お酒はよくわからないから、翔さんに任せるね。」
「おぅ…わかった。」
潤がなんかおかしい。
智くんが来てからかは、やたらとハイテンションだ。
その潤が俺の傍に寄ってきて隣に座り、肩に手を回して広げていたPCを覗き込む。
顔の距離がやけに近い……潤の髪が頬を擽る。
「相変わらず難しい仕事してるんだね?帰ったらまた、色々教えてくれる?
じゃ、残りの仕事頑張ってね。」
そう言って、まさかのキス……
しかも大胆に俺の首に両手を回して、深く舌を絡め取られた。
「っん…………っ」
固まる俺。
最後に大きくリップ音を響かせ、唇が離された。
「じゃあ大野さん、お先に……翔さん、後でね!」
鼻歌混じりに潤が楽屋を後にする。
まさに嵐が過ぎ去った後の静けさが暫く続いた。