その瞳は誰を見てるの?
第12章 その瞳は誰を見てるの? 12
1人でいると、ふたりのことばかり考えてしまう。
当然ネガティブ。
ポジティブシンキング……無理だろ。
またあの時の震えがきそうだ。
しっかりしろよ、翔。
辛いのは…あの愛おしいふたりなんだから。
やはり早く家を出ることにする。
午後からの仕事。
誰よりも早く着くな……当たり前か。
大分早く出てきたもんな。
早く出たかったんだ。
1人でいる自分の部屋から。
念のため楽屋のドアをノック。
コンコンコン…
「はい?」
「え…智くん?」
ドアを開ける。
「おはよ、しょおくん。」
「智くん、おはよう…随分早いんだね。」
「珍しい?たまにはいいんじゃないかと思って。
早く入ってのんびり準備ってのもね?」
「そっか…そうだね。
お兄さんチームはのんびりしますか?」
「うんうん…ふふっ!」
ひとまず俺は、新聞に目を通す。
その向かいで、携帯で釣り情報やらを見ている智くん。
ん……お互いになんだか落ち着かないのが伝わってくる。
智くんが携帯を置テーブルに置いて立ち上がり、外へ出るのかと思いきや、ドアの鍵をかけた。
俺の方に向き直る。
黙って隣に座った。
「どうしたの…智くん…?」
「ちょっとね…しょおくんの傍に居たくなったの。」
「そう…じゃあココにいて。」
新聞を開いている俺を気遣い、邪魔にならないようにそっと膝に手を置く智くん。
読みながら膝の手に、自分の手を重ね包み込むように握る。
それと同時に、今は不要な新聞をテーブルに置いた。