その瞳は誰を見てるの?
第16章 その瞳は誰を見てるの? 16
涙が止まらず、このまま体ごと溶けてしまいそうだ。
その時潤が、泣き崩れる俺をそっと抱き起こし、ぐっと抱き寄せてくれた。
優しい声がした。
「翔さん……辛かったの、翔さんじゃないか……そりゃ、僕も大野さんのマンションのこと…マグカップのこと…ベッドルームのこと…色々あったけど……ごめん、まだ根に持ってた、僕……
翔さん…独りで抱え込んでたんだね……?」
温かい……お前の言葉が俺を包んでくれている。
潤……お前に甘えてしまいそう………
「潤…お前も…なぜ俺に優しくできるの……?嘘ついていたんだよ……お前を傷付けた……」
「傷付いてない訳じゃないよ。それこそ、嫉妬に狂ってたもんね……でも思ったんだ。大好き過ぎるんだって。愛し過ぎてるんだって。
その気持ち、3人とも持っていたら…?って。翔さん、優しい嘘、つくしかないでしょ。
僕を傷付けないようにしてくれたんだよね……
翔さん……」
潤……力一杯抱きしめた。
「翔さ…ん……苦しい……」
ごめん。
ガチャリ……
ドアの開く音。
「大野さん…」
「さ…とし…くんっ……」
潤を腕に抱いたまま、視線を向けた。
ふにゃっと笑ったいつもの顔。
「しょおくん……ようやっと、吐き出せたんだよね?少しは楽になった?」
「えっ…智くん…?それ……どうして……?」