その瞳は誰を見てるの?
第3章 その瞳は誰を見てるの? 3
~S side~
智のマンションを出た。
頭の中がボーッとしている。
エントランスを出て冷たい空気を思いきり吸った。
ふぅ…大分平常心が戻ってきたかな。
はっきりしてきた視界の隅に、人影が見えた気がした。
ん…?
じ…潤っ…!?
マンションの壁に寄りかかり、俯いている潤。
キャップを被っていても、すぐバレるだろ?
こんなところに……
つけてきたのか……?
声、かけにくい……顔、合わせづらい……自業自得。
このまま帰る…訳にはいかないよな。
「潤!」
「あ…翔さん……ごめんっ!」
「何、謝ってんだよ…」
「だって…翔さん達のこと…つけてきたんだ…
どうしても…どうしても、二人だけにしたくなくて……乗り込もうと思った…で、一緒に飲んじゃえって……
でも…もし…もしも、翔さんと大野さんにナニかあったらって……そしたら、ここから動けなくなった…の……」
震える声で一気に話す潤の肩に、そっと手を置いた。
瞳を合わせぎゅっと抱きしめる。
いつも以上の力で。
「潤……帰ろう」
「翔さん…?大野さんとは……」
「何もないよ…心配いらない……」
胸の奥がチクリと痛んだ。