欲望ベイベー
第21章 翔くんの愛。
S side
S「一緒にいてボロ出すのも嫌だしな・・・
ちょっと散歩でもするか!」
M「え?!カズは・・・」
S「ちょっとくらい良いだろ。」
戸惑う潤の手を引いて、長い廊下を進む。
確か、こっちからも庭に出れたはずだ。
M「・・・・・」
繋いだ手に、少しぎこちなく力が入る。
なんだろうな・・・
俺ら、お互いちょっと緊張してる。
理由は分かってるんだけど。
M「懐かしいね、ここ。」
広い庭を楽しそうに歩く潤の後ろを歩く。
以前撮影で使ったこの場所を、潤は良く覚えているらしい。
S「俺あんま覚えてないんだよな。」
M「ええ?!」
信じられない、という顔で俺を振り返る潤が可愛い。
S「だって、結構昔だろ?」
多忙なスケジュールをこなす日々だった。
潤とも距離が空いてしまい、恋人ともうまくいっていなかった俺は、とにかくわざと忙しい毎日を送っていたから。
S「どこでどんな仕事をしたかって覚えてない事も多いんだよなぁ。」
M「・・・なんか、寂しい人だね。」
少し拗ねた潤がぷいっと前を向いてまた歩き出す。
可愛いなぁ・・・
俺の前では、甘えた仕草や可愛い素の部分を見せてくれる事が多くなった潤。
俺しか知らない松本潤。
この優越感はたまらない。
S「潤、ちょっと座ろう。」
見つけたベンチに座れと促すと、素直に腰を下ろして俺を見つめる。
S「・・・前髪、おろしてるの可愛い。」
そっと髪に触れると、一瞬で赤くなる。
大きな瞳が戸惑いに揺れた。
M「なに、いきなり・・・」
S「スーツん時って、髪あげてる事が多いじゃん。
今日はおろしてるからさ。
可愛いなと思って。」