誰も見ないで
第4章 真実と真実
そしてその前に座ると、思い出したように「そーいえば」と話し出す
「駅にあいつ居たぞ。えーっと……名前なんだっけ」
「?」
「あぁ、そうだ。渡辺?」
「え……っ」
買って来たお菓子のうちの1つを開けて口の中には放り込みながら話す大和くん
「駅前の広場で座ってた。すげー見られてたわ」
大和くんとは幼馴染だけど、家が近かったのは昔の話
中学校の途中で引っ越したから、今は一駅離れたところに住んでる
僕の家まで電車で来たから駅にいたのを見たんだろうけど
時計を見ると、時間はさっき確認した通り10時
大和くんが歩いて来たりした時間を考えると待ち合わせ時間には早すぎる
こんな時間から待ってる……?
なんてありえないことを考えて自分で否定した
そんなわけないよね
僕と待ち合わせする前に、他の用事があったのかな
「そうなんだ……」
僕がそう言うと、昨日のこと以外全て知ってる大和くんは意外そうな顔をした
「付き合ってても休みの予定とかは知らねぇんだ?」
「…………うん」
もともと聞いたこともないけど、今はそれより「付き合ってる」って言葉が胸に痛い
「? まぁ、いいから座れよ」