誰も見ないで
第4章 真実と真実
「泣くほど嫌なのか? そんなことされてもまだあいつのこと好きなのか?」
「え……」
僕、泣いてる?
大和くんの勢いが治ったから手を離して、自分の顔に触れると
確かに、泣いてる
そう自覚した直後一気に悲しさの波が押し寄せて来て、僕の視界が揺らぐほど涙で溢れた
「瑞稀!?」
突然泣き出した僕にびっくりして慌て始める大和くん
ほんとは大丈夫だよって言ってあげたいけど、今の僕にそんな余裕はない
それどころか力が抜けてその場にへたり込んでしまった
なんでこんなに悲しいんだろ
なんでこんなに、酷いことされた渡辺君のこと嫌いになれないんだろ
そう思えば浮かんでくるのは楽しかった屋上や教室での会話や、メールのやり取りで
あぁそっか
って妙に納得した
例え嘘でも
付き合ってくれてたあの時間に僕は渡辺君のことこんなに好きになってたのか
だから
「……っうぅ、ぅ……っ」
全然涙の止まらない僕の背中を大和くんが優しくさすってくれる
「やまど、ぐん……っ」
「何だ?」
「ぼく……僕ね……っ、わたなべ、君に僕のこと……っく、ぅ……好きに、なって貰いたい……っ」