誰も見ないで
第4章 真実と真実
心配そうに、だけど申し訳なさそうに僕の顔を覗き込む渡辺君
「ごめんね……許して、貰えないかなぁ?」
渡辺君は僕が怒ってるか悲しんでると勘違いしてまた謝罪の言葉を口にした
僕はそれを必死で否定するために首も手も振って「違うんです」と言う
「う、嬉しく……て……っ」
「!」
正直に気持ちを言うと、渡辺君の表情がパッと明るくなって
「……うぅ」
直後に何かを我慢してるみたいな顔になった
「?」
「今……猛烈に紺野君のこと、ぎゅってしたい……」
ぎゅ、だって
かわいい
少し幼稚な言葉に笑いを誘われつつ、僕が「して下さい」って両手を伸ばすとその手を引かれ
「!」
すっぽり包まれるように渡辺君に抱き締められた
う、うわぁ
うわぁぁあ
人の体温をこんなに近くで感じたのなんて、生まれて初めてかもって思うぐらいドキドキして
それなのに守られてる感じがして安心して
わけわからなくなるくらい頭の中がぐちゃぐちゃになる
「ふふ……今、すごくドキドキしてる」
渡辺君がそう話した吐息が僕の頭にかかって首筋がゾクゾクした
「僕も、です……すごくドキドキしてます」