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誰も見ないで

第5章 好きになんて(サイドストーリー)


「いんだよ、別に。もう今日は美術の授業ないから使うこともねぇだろ」


なんでそんなことをあなたが知ってるんだ


そう思いながら相原大和の行動を目で追っていると


「ほら」


パンを1つ俺の目の前に差し出される


「……」


いや、受け取るわけにはいかないよね
学校のだし


黙って見ていると、相原大和が俺の態度に焦れたらしく


「……ったく」


と仕方なさそうな声を出しながら立ち上がって


「え、ちょ……っ!?」
「いいからじっとしてろ」


窓枠に背中を靠れるように座ったかと思ったら胡座をかいたそこに横向きに俺を座らせた


ま、またひょいって……


その体勢もだけど、脇に手を入れられて軽々と持ち上げられたことに少なからずショックを受ける


俺そんなに軽いかな
昨日も軽く持ち運ばれたような


「……っんぐ!?」


そんなことを考えていると、突然口の中に何か押し込まれる

それが1口大にちぎられたパンだって気がつくのと、悪そうな顔で笑う相原大和の顔に気づくのはほとんど同時


やられた


と思ったけど、口に入れたものを吐き出すわけにもいかなくて


「……」


大人しくパンを食べる

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