誰も見ないで
第6章 キスの次は
そしてとうとう紺野君本人にそんなことを聞かれてしまって、俺は勢いよく否定した
「う、ううん! そんなことないよ。風邪はちゃんと治ったし、熱ももうないから」
元気元気、と両手を振ってアピールしてみるけど、後ろの席にいる俺のこともちゃんと見ててくれたらしい紺野君は納得してくれない
「ほんとですか? 無理しないで下さいね。……ん、でもほんとに熱はないみたい」
「……っ」
それどころかおでこに手を当てて熱を測られてしまって、顔が音を立てるほど勢いよく赤くなるのを感じた
「わっ……と、でも今日も風強いですし、早く教室に戻りましょう」
幸運にもその場面は急に吹いた強い風で揺れた紺野君の長めの前髪が遮ってくれたみたい
た、助かった
正樹にはこんなこと絶対ならないから
俺、本当に紺野君のこと大好きなんだなぁ
それと共に実感した自分の気持ちに胸が締め付けられるように甘く痛む
早く慣れて紺野君の顔をちゃんと見れるようになりたいって思う
けど
慣れるなんて一生無理な気もする
それに、慣れちゃってドキドキしなくなるのも嫌
わがままだな、俺
「今日のそれ、自信作なんです。どうですか?」
「す、すっっごく美味しい」
「良かった」