誰も見ないで
第7章 罪と罰と罪と
会いたくない
会いたくないよ
血の繋がった実の父親にこんなに会いたくないって思ってる人が他にいるのかってくらい
会いたくない
けどお酒やタバコや博打に溺れてるような人に、絶対に通帳とカードを渡したりしない
だってこれは
お母さんが死んだ時僕に残してくれた大切なものなんだから
ほんとは1円だって、あげたくない
けど
暴力を振るわれるのは
怖くて痛いから
仕方なくなんだ
僕は涙が出るのをぐっと堪えた
けどお父さんにはそれが睨んだように見えたらしくて
「何睨んでやがんだよぉ!? あぁぁ!?!?」
狂ったように叫んでまた僕を蹴飛ばした
その時運悪くつま先が脇腹と床の間に入ってしまって、蹴り上げられる形になって身体ごと飛ばされる
ゴン、と頭と棚の当たる鈍い音が部屋と僕の頭の中に響いた
遅れてやってくる痛みと共に、揺れた拍子に僕の上に棚に置いてあったものが落ちてくる
「……っ」
その中には、お母さんの遺影もあって
絶対にそんなことないのに、こんな姿になって情け無い僕に呆れてるような気がして涙がまた溢れそうになった
「いつまで転がってんだよ!! とっととコンビニでも行って金下ろして来いや!!!!!」