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誰も見ないで

第8章 記憶



朝起きると、全部夢だったんじゃないかって思う

そんなわけないんだけど


「おはよう」


夏休みだから少しゆっくりめに起きてリビングへ行くと


「湊斗おはよー!」
「おはよう」


無駄に明るい母さんと
父さんと

そして


「おはよう」


俺のことを兄だって信じてる瑞稀君に迎えられる


「よく眠れたか?」


父さんに聞かれて、正直そんなに眠れてなかったけど「うん」って答えた


ご飯を食べて、顔を洗って歯を磨いて
そこまで済ませてから一旦部屋に戻ると、控えめに俺の部屋のドアがノックされた


「? 入っていいよ」


声をかけると、入ってきたのは瑞稀君


「ぁ……どうかした?」
「え、と……聞きたいことがあって」
「うん。なに?」


座って、と手で促すと瑞稀君はちょこんと床に座った

それに向かうように俺も座り直すと


「僕とお兄ちゃんって、いつもどんなこと話してた……?」


と顔色を伺うように聞かれる


「どんな……」


俺が少し答えに迷って質問を反芻すると、瑞稀君は焦ったように首と手を横に振った


「あ、変なこと聞いてごめんなさい!! なんか、その……思い出すことがあるかなって……」

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