誰も見ないで
第8章 記憶
あぁ、そういうことか
「ふふ、そんなに恐縮しなくても大丈夫だよ。何でも聞いて」
なんかそういうところは瑞稀君らしいな
いろんなことに気遣っちゃう感じが
俺の言葉に安心したように表情を緩ませた瑞稀君
「いつもどんな話……かぁ、なんだろ。好きな本の話とか、学校の話とか?」
「なんだか仲良し兄弟みたい」
瑞稀君の言葉に胸に小さくて細い針が刺さった
「……うん。仲良かったよ。すごく」
それを聞いて嬉しそうにする瑞稀君に、更に少しだけ胸が痛む
「背凭れなくて座りにくいでしょ。隣おいで」
俺がベッドを背凭れに座り直して隣の床を軽く叩くと、瑞稀君がゆっくり俺の隣まできた
すとん、と座って
「……」
なんでか暫く喋らなくなる
「どうかした?」
「あ……えぇと、なんだか……懐かしい? ような気がして……いつもこんな風に隣に座って喋ったりしてたの?」
屋上で一緒にお昼休みを過ごした記憶が蘇る
「うん。瑞稀の隣は俺の特等席だったからね」
俺がそう言うと、瑞稀君はパッと顔を下に向けた
「そう、なんだ……」
それからまた少し瑞稀君は喋らなくなる