誰も見ないで
第9章 何度でも好きになる
「……」
「……」
その後暫く2人とも無言になって、寄り添いながらお互いの呼吸音を静かに聞いてた
ちゃんと、瑞稀君が瑞稀君として俺の腕の中にいる
そのことだけですごく嬉しくて仕方ない
でもその考えは俺だけじゃなくて瑞稀君も思ってたみたいで
「ここに、ちゃんと戻って来られて良かった」
と呟いた
「うん。おかえり、瑞稀君」
俺が言うと、返事をされると思って居なかったのか驚いた顔をされて
すぐにえへへ、という照れ笑いに変わった
「ただいま」
と言ってくれた
「兄弟じゃなくて良かった」
「ほんとですね」
それからベッドでうだうだしながら始めた会話の中で
「それ、もういいんじゃない?」
俺は気になってたことを指摘してみる
「それ?」
「その、敬語」
「あ……」
記憶が戻ってからちょこちょこ敬語になったり戻ったりを繰り返していたのを瑞稀君も気がついていたのか、口元に手をやって「そういえば」と呟いている
「なんだか、どっちも癖になってたから戻しにくくて」
恥ずかしそうに笑う瑞稀君に、少しだけ近づいて
「徐々にでいいから、敬語はやめて欲しいな」
と要望を伝えた