誰も見ないで
第9章 何度でも好きになる
だってやっぱり、少し遠い気がして嫌なんだもん
記憶がなかった頃の瑞稀君と接してるのは辛かったけど、心を開いてくれてる感じは心地よかったから
普段からそうなって欲しい
すると瑞稀君がもぞもぞ動いて、俺の鎖骨らへんに顔を埋めた
少しはだけた布団を掛けなおしてあげると、小さな声で
「うん。がんばる」
と言われたのがぎりぎり聞こえた
それが嬉しくて、俺は優しく瑞稀君を抱き締める
「……もうちょっとこのままでいよっか」
離れるのが惜しくて、こんな提案もしてみる
「寝ちゃわない?」
「寝ちゃったら俺が濡らしてあっためたタオルで身体拭いといてあげる」
瑞稀君軽いから、持って運ぶのも別に大変じゃないけど
「それとも、汗かいて気持ち悪いからすぐお風呂入りたい? 動くの面倒だったら今すぐタオルも用意してくるよ」
俺が腕の力を緩めながら聞くと、離れるどころか瑞稀君から俺にぎゅ、と抱き着いてきた
「…………このままで、いる」
顔が綻ぶのを感じながら、俺はもう1度腕に力を入れる
瑞稀君も俺と同じ風に思ってくれて嬉しい
「うん。もう少しだらだらしてよう」