誰も見ないで
第9章 何度でも好きになる
これまでの人生でこんなに怒ったことはないってぐらい、心臓で血液が沸騰してるような
そんな感覚がする
けど
その怒りもあることを思い出せばすぐに萎んでしまった
瑞稀君がこうなったのは
ここまで深く傷ついたのは
俺にだって原因があるんだ
俺がちゃんと、瑞稀君の変化に気がついていたら
あの日
最後に瑞稀君を学校で見た日
なんで気がつかなかったんだ
「!」
すると突然瑞稀君の手が俺の頬に触れた
「なに?」
びっくりしてたずねると、瑞稀君は悲しい顔をしながら俺に
「泣かないで」
と言った
「え……? …………あ……」
言葉の意味がわからなくて自分の頬に触れると、確かにそこは濡れてて
「なんでだろ……」
俺が泣く資格なんて
ないはず、なのに
けど、泣いてるって自覚したら一気に込み上がって来て
「……っ」
もう自分では止められなくなってしまった
「ごめん、ね……瑞稀君、ごめん……っ」
心の声が
いっぱいになったところから溢れて
口から吐き出すみたいに出て行く
「気づいてあげられなくてごめん、守って……っ、あげられなくて、ごめん……っう、く……ぅ」