誰も見ないで
第9章 何度でも好きになる
今回のことで俺は、只管に自分の弱さや無力さを思い知らされた
「はやく、おとなになりたい……っ」
年齢を重ねるだけが大人じゃないなんてことはわかってる
でも
自分じゃ出来ないことがあまりにたくさんあって
今回、父さんと母さんが日本に帰ってきてなかったらどうなってたか
なんて、想像もしたくない
俺が涙の止め方がわからなくなって泣くしか出来なくなっていると
「!」
瑞稀君が上にずりずり上がって、俺の頭を包むように抱き締めた
瑞稀君のしっとりした肌に耳がくっついて、微かに心臓の音が聞こえる
「僕も、早く大人になりたい」
頭上から静かに聞こえた声は、俺の頭に染み込むみたいに入ってきた
瑞稀君も?
同じ考えだって言う瑞稀君の小さな手が俺の髪の毛を掻き分けて静かに撫でてくれる
「湊斗君を悲しませる自分が、1番嫌いだ。もっと安心させられる、支えられる大人になりたい」
「……」
高校生ってなんて中途半端な時期なんだろう
子供と大人の間で
守ってもらわなきゃいけないほど弱くないのに
誰かの手を借りなければ1人では何をするにも許されなくて
ガラスの向こうにある世界を、ただ眺めるしか出来ない