
誰も見ないで
第11章 侵略者
あ、この言い方は本当にいた時その人に失礼かも
すると電話口から大きな溜息が聞こえた
『まぁそういう人がいないとも限らないな。だが今回の件ではそれはほぼあり得ない』
え、なんで
「そんなはっきりわかるの……?」
『わかるよ。例えば俺が人から何か盗むなら、盗んだ時に騒がれない方がいい。騒がれて犯人探しなんてされたら面倒だし、学校なんて狭い中だと見つかってしまう可能性が高いから。それに、シャーペン1本ぐらいならうっかりなくしちゃった、ぐらいで済む人間も少なくないだろう』
探偵のような言い回しが少しだけ面白いなんて言ったら怒られそうだ
『なのに今回なくなったのは湊斗の、しかもよく使ってるシャーペンだった。湊斗の物がなくなったら他の人間が騒ぐのなんて誰だってわかる。つまり、今回はシャーペンを盗むのが目的だったのではなく、湊斗の物を盗むのが目的だったってこと』
崖に追い詰められる犯人が見える
でも探偵さん
そもそもの前提がわからない
「なんで俺のなんて欲しがるの?」
頭は悪い方ではないけど、俺のシャーペンを使っても何のご利益も得られなそうだ
と、そこで本日2度目の正樹の大きな溜息をくらった
