誰も見ないで
第12章 侵入者
朝起きる度に俺のベッドの下に敷かれた布団で眠る学校の王子様の姿にげんなりする
正樹に対してこんな風に思うのは多分世界中でも俺ぐらいだと思う
起こさないようにそっと部屋を出てリビングに行くと、瑞稀君が朝ごはんを作ってくれていた
「おはよう、瑞稀君」
俺の挨拶に「おはよう」と笑ってくれる
朝のこの時間だけが癒しだ
「何か手伝う?」
「もう出来上がるから大丈夫」
手伝いの申し出を断られ仕方なく机に座って瑞稀君の姿をぼーっと眺めていると、隣の椅子に大きな影が腰掛けた
「おはよう2人とも」
「おはようございます」
「……おはよ、正樹」
さっきまで熟睡してたとは信じがたい程にすっきりとした顔で微笑む正樹に、挨拶の態度が冷め切ってしまう
だってあれから本当に見張られてるんだもん
学校や通学路ならまだしも、誰の目もない家の中でまで俺と瑞稀君の距離が縮まるなり邪魔をされる
もう少し遅く起きてくれていいのに
学校に行くまでにはまだ時間があるのに、涼しい顔で起きてきて俺たちの時間を邪魔して来る正樹に生まれて初めて恨めしい感情を抱く
それもこれも、俺が悪いんだけどさぁ