誰も見ないで
第14章 文化祭
すると先生が
「次、このー……58ページを小川、読んでくれ」
と声を掛けて
俺が見つめていた先のその子が立ち上がった
小川さん……
あっ思い出した
文芸部でたまに表彰されてる人だ
集会の時、壇上に上がって賞状を受け取る彼女の姿が思い浮かぶ
同じクラスだし、回数も少なくなかったから
そっか
あの小川さんか
でも
なんで突然小川さんと瑞稀君が話すようになったんだろ
結局その日はその後休み時間中にトイレに避難することも、瑞稀君たちの話を聞くことも出来ないまま1日が終わってしまった
「ただいまー……」
帰りに再び木下さんに捕まって、見たところで何もわからない雑貨屋さんに連れていかれた俺が漸く帰宅すると、瑞稀君がひょこっと顔を出してくれた
「おかえりなさい」
「ただいま」
2度目のただいまを言ってから微笑み合って、部屋に上がる
「ふへー……疲れた……」
「お疲れ様」
部屋に座り込んで嘆く俺に優しい言葉をかけてくれる瑞稀君
「今日もすごかったね」
「うん……なんであんなに毎日色んな話が出来るんだろ……むしろ尊敬の気持ちが湧き上がりそう……」