誰も見ないで
第14章 文化祭
それが足音だってことに気がつくと、身体中から再び怒りが込み上がってくる
その足音が、俺を探す木下さんのものに感じたから
来るな
来るな
やがて足音は近くなって
とうとう階段を登り始めた
上がって来る度に怒りをぶつけたい衝動が増す
そしてついに、階段を上がってきた
その人の顔が見えて
「!?!?」
俺の感情が一気にどこかへ飛んで行ってしまった
「瑞稀、君……?」
「ここにいたんだ」
小さく微笑んだ瑞稀君は、ゆっくり階段を登りきると俺の隣に座った
「なんで……ここに」
「なんでって、湊斗君を追いかけてきたからに決まってるでしょう?」
首を傾げながら笑う瑞稀君が変なの、と言う
「なんで、追いかけてきたの」
「ふふ、なんでばっかり」
「ごめん……」
「ううん」
責めたわけじゃないよ、と言ってから瑞稀君は俺の手に自分の手を重ねた
「追いかけないわけ、ないよ。あんな辛そうな顔してたのに……」
そして重ねた手を見つめながらそう言われて、俺は飛んで行ってしまった感情が全部悲しみになって戻ってきたような気がした
「……っ」
重なっていた手が離れて、俺の頭へとそっと移動する