誰も見ないで
第14章 文化祭
その時の小川さんの表情がすごく悲しげで、見ていられなくなった
目を晒すと、視線は自然と瑞稀君の方へと向かって
「……っ」
やっぱり
ズキン、と強く痛んだ心臓を手で掴む
そんな
悲しそうな顔しないで
「渡辺君、食べよ?」
何でもないように俺に笑いかける木下さんへ視線を移す
憎い、とすら思った
身体中を真っ暗な感情が駆け巡って
染められていく
例え木下さんがやったんじゃなくたって
きたない、とか
あんなもの見て平然と自分はご飯を食べようとか
気がしれない
「俺、もういいや」
お弁当を片付けて席を立つと、俺は1人廊下に出た
「えっ、待って!」
後ろから木下さんの声が追いかけてきたけど、あのまま一緒にいたら凄まじい暴言を放ってしまいそうで
むり
心を落ち着かせるためにも、俺はどこか1人になれる場所を探した
特別教室が並ぶところの階段の1番上
そこからは屋上に入れないけど
入れないからこそ、人が来ない
少しだけ開けたそのスペースに座り込んで息を吐く
どうしよう
考えても答えが出なくて
焦りを募らせていると
「!」
コツン、と小さな音