誰も見ないで
第14章 文化祭
「心配しなくていいよ。瑞稀君が好きな人にフラれるなんてこと、一生あり得ないから」
そんな顔、させるわけない
動きを止めた2人は、俺がどういう意味で言ったかなんてわかんないんだろう
けど、説明してあげる義理もないし
「じゃあね」
俺は2人の話し合いが決着する前に1人で来た道を引き返した
小川さんは俺にも何か怒ってたし
木下さんは俺に助けて欲しそうだった
けど
今の俺にはそんな2人の相手よりもしなきゃいけないことがあるから
携帯を取り出して時間を確認すると丁度瑞稀君も休憩に入った時間
俺は早足になりながら、自分のクラスの控え室に向かった
「! 湊斗君……?」
到着して勢いよく引き戸を開けると、中にいた瑞稀君がびっくりしたように俺を見た
「瑞稀君だけ?」
「うん……? 他の人は着替えないで校内回るって……」
衣装を着たままの瑞稀君は、不思議そうな顔をして俺を見ている
「そっか」
ごめんね
説明してる時間も余裕もない
俺は誰もいないことだけ確認した後、瑞稀君に駆け寄った
そしてその勢いのまま
「……っ」
思いっきり抱きしめた