誰も見ないで
第14章 文化祭
「みっ……湊斗君……?」
瑞稀君がびっくりしてる
そりゃそうだよね
突然抱き締められたらびっくりする
しかも、こんないつ誰が入ってくるかもわからない文化祭中の控え室で
けどごめん
もう少しだけ
「良かった……」
俺はまだ全然状況の掴めてない瑞稀君にたくさんキスをしながら
「好きだよ、大好き」
と、何度も何度も
染み込ませるみたいに伝える
「何か、悲しいことがあったんですか……?」
おずおずと俺に聞いてくる瑞稀君の言葉を少し考える
悲しい……
そうだなぁ
悲し……くはない、かな?
むしろどっちかというと
「嬉しいことがあったんだ」
「嬉しいこと……」
「うん」
瑞稀君のかわいさに気がついたのが俺だけだった
瑞稀君のことを好きなのが俺だけだった
それだけだけど
それだけで、すごくすごく嬉しい
「ね、瑞稀君、2人っきりになれるところ、行こう?」
幸いにも、誰も人がいないところはさっき確認してきたから
俺は瑞稀君が着替えるのを待たずにそのまま手を引っ張って、さっき誰もいなかった特別教室の1つに入る
瑞稀君はまだ状況もわからずに説明を求めて俺を見ているけど、俺は構わず瑞稀君の両頬を手で掬うようにして触った