誰も見ないで
第14章 文化祭
「よっ、汚れる、から……っ」
焦った様子で手を退けようとする瑞稀君に「いいから」と押し切ってお尻の方まで綺麗に拭く
タオルじゃないからあんまり綺麗に拭けないけど、ないよりマシだよね
「はい、いいよ」
全部拭いて、俺がそう声をかけると瑞稀君は脚から力が抜けたらしくかくん、と膝を折る
「わっ、危ない!」
俺はそれを何とか受け止めて、自分が座った膝の上に瑞稀君を乗せた
無理させたし、固い床じゃ痛いもんね
それにこの体勢って、顔がちゃんと見えるからすごく好き
向かい合わせで座った瑞稀君の額にちゅ、とキスを落とすと
「……っ」
瑞稀君の頭が俺の鎖骨のあたりに寄りかかってきた
何となくそうしやすい体勢になったから、俺がぎゅ、と抱き締めると瑞稀君が頭をぐりぐり押し付けてきて擽ったい
けどこれはもしかしたらこんなところでしちゃった俺に対する非難の行動なのかも
そう思って抱き締めながら
「ごめんなさい」
と謝った
すると瑞稀君はぐりぐりするのをやめて
「どうして謝るの?」
と聞いてくる
「こんな、場所も考えずにしちゃって、ダメだなって思ったから」