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誰も見ないで

第15章 そんな時期


異常なほど煩く音を立てる心臓


でも渡辺って、ありきたりな名前だよね
確か他のクラスにもいたし

そもそもあの子達が違う学年ってことも
いや、そしたら大学がどうのとかって言わないのかな


色々考えて、どうにか湊斗君じゃないって答えを出そうとしたけど


「えーそうなんだ。でもさぁ……ーー」
「あ、やば……戻ってきたよ」
「あっ……」


突然黙った女の子達
それに一拍遅れて


「ただいま」


と頭上から湊斗君の声


これは、もう
湊斗君の以外には考えられない、よ


「? どうしたの?」


僕が見上げたことに首をかしげる湊斗君


「あ、もう見終わったの?」


手元にある資料は、もう次のページから全く違う分野の大学が掲載されている


「どこかコピー取ったりする?」
「……ぁ……ううん。大丈夫」
「そう? なら帰ろっか」



湊斗君は見なくていいの


と聞いたら、この疑問の答えが少しは出るんだろうか

日本の大学にもし本当に行かないとしたら
見る必要、ないもん……ね


急激に襲ってくる悲しみと不安で、今すぐ叫び出してしまいそう

それぐらい
今の僕の精神は不安定で


でも結局その日は答えを聞くのを怖がって
何も聞かずに終わってしまった

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